5分でわかるEthernet-APLのすべて
Ethernet-APLという言葉を聞いたことがあると思いますが、ではなぜそれがプロセスオートメーション業界を大きく変えるといわれているのでしょうか?このトピックを理解するために知っておくべきことを見てみましょう。
私が最初に設定した機器は、空気式差圧伝送器でした。でも、あくまで練習用なので実際に現場で動いているところを見たことはありません。しかし、技術教育では、こうした古い技術についてもたくさん学びました。
この頃、Foundation Fieldbusは最新の技術でしたが、現場ではすでにイーサネットやワイヤレス機器に埋め尽くされる日が近いと言われていました。数年後、私はその技術の変化の一端を担い、これらの新しいデバイスをテストしていました。
私たちは、いつになったら意味のあるパワー・オーバ・イーサネットに対応したフィールド機器ができるのだろうといつも思っていました。オートメーション・ピラミッドの上位レベルでも、すでにアナライザー、ドライバ、流量計などの4線式イーサネット・デバイスが使われていたからです。
さて、時が経つのは超早いもので、ここにきてようやくEthernet-APLが登場し、ゲームをひっくり返せるようになりました。それでは、もうすぐ完全なイーサネットプラントができるのを楽しみにしています。
目次
- Ethernet-APLとは?
- Ethernet-APLのメリットとは?
- Ethernet-APLの構成要素とトポロジーについて
- Ethernet-APLの現場への導入は簡単?
- Ethernet-APLと産業用IoT
Ethernet-APLとは?
まず、APLは "advanced physical layer" の略です。この物理層は、PROFINET、EtherNet/IP、OPC-UA、HART-IPなど、多くのプロトコルをサポートしています。
この技術の開発は、2018年に "APLプロジェクト "として発足しました。IEEEやIECの規格を強化するために、幅広い組織がプロジェクトに参加しました。開発にあたり、市場への速やかな普及が進むように、既存の規格を拡張することとしました。
すでにご存知のシールド付き2線ケーブルで、信頼性が高くシンプルなネットワーク構造とトポロジーを備え、電源供給と通信を同時に実現します。Ethernet-APLは全二重で、10Mビット/秒、最大1000メートルのケーブル長に対応します。
Ethernet-APLのメリットとは?
まず、このAPLは物理層の仕様なのでサポートされるプロトコルには、大きな柔軟性があります。標準化されたイーサネットプロトコルを好きなように使用することができます。
この記事の後半で、産業用IoTとの関わり方についてご説明いたしますが、今のところ、物理層は世の中にあるほとんどのIIoTの概念に合致しています。それでは、Ethernet-APLがもたらす実用的な面をリストアップしてみましょう。
- ネットワーク構築の手間が少ない
- トラブルシューティングのツールがITとOTで同一
- 最小限の設置時間とコスト
- Ethernet-APLは2線式フィールドバスケーブルを採用
- 長距離伝送(最大1000m)対応
- デジタル通信と電源供給を同一ケーブルで実現
- 防爆に対応
- サージ保護、電磁波障害に強い
- タイプAフィールドバスケーブルの再利用が可能で、他の技術に比べて移行が容易
Ethernet-APLの構成要素とトポロジーについて
Ethernet-APLは、トランク&スパートポロジー、オプションで冗長化、その他多くの復元性のあるコンセプトなど、さまざまな技術をサポートしています。セグメントを構成するスイッチと各フィールドデバイスとの接続は、ポイントツーポイントになります。
各Ethernet-APLスイッチは、セグメント間の通信を分離し、クロストークなどの障害を排除します。また、異なるセグメントのデバイスの障害や干渉から通信を保護します。
ここでは、Ethernet-APLに適用される技術的な属性について説明します。
スイッチに関しては、トポロジーの柔軟性を実現する2つのポイントもあります。まず、一つまたは複数のトランクポートで電力と通信を供給する電源スイッチがあります。これらは外部から電力が供給されます。
次に、フィールドスイッチで、スパーに接続するポートが装備されています。このスパーの電源はトランクまたは外部から供給されます。
コンパクトなトランク&スパートポロジーの例
スター型トポロジーの例
Ethernet-APLの現場への導入は簡単?
この技術の開発にあたり、業界に広く普及しているネジ式端子、スプリングクランプ式端子、M8やM12といったよく知られたタイプのコネクターを採用しました。これらは皆さんもよくご存じですよね?
Ethernet-APLを実装するケーブルもAタイプのフィールドバスケーブル(抵抗値100Ω、公差±20Ω)、IEC 61158-2はAWGクラス26~14、配線断面積0.324~2.5mm2を標準ケーブルとしています 。
他の技術で発生する配線ミスを減らすため、Ethernet-APLは無極性を採用しました。またフィールド機器の接続はピアツーピアで行われ、互いに干渉はしません。
2線式仕様は、Ethernet-APLに採用された追加機能で、本質安全防爆回路のパラメータを定義しています。このコンセプトはFISCOから派生したものです。フィールドエンジニアと技術者はすでに本質安全防爆の技術に精通しているので、エンジニアリングの手法はこれまでのルールと同じです。
ウィザードアプリと自動設定により、設定も素早く行えます。Ethernet-APLにより高速データ転送が可能なため、シンプルで迅速なコミッショニングが可能です。Field Xpert SMT70のような産業用タブレットは、スマートフォンやケーブルテスタ―とともに、デジタル機器を扱う現場技術者の日常の道具となるでしょう。
Ethernet-APLと産業用IoT
この技術は、Industrial Internet of Thingsの実際のコンセプトに即座に実装され、工場の建設、試運転、運用を簡素化するために開発されました。その方法を簡素化するために、NAMUR Open Architecture(NOA)とOpen Process Automation Forum(OPAF)によるOpen Process Automation Standards(OPAS™)があります。
Endress+HauserのNetilion EcosystemのようなIIoTクラウドベースのサービスでは、現場とクラウド間の接続をサポートするEthernet-APLアプリケーションがまもなく登場し、診断や予知保全などの目的別に様々なサービスのご提供が始まるでしょう。
これらのアプリケーションは、OTとITの透過的な統合を可能にし、単一のネットワーク技術の実現に焦点を合わせています。今後、Ethernet-APLに関する情報、アプリケーション、技術的なアドバイスなどをお届けしていきます。
それでは、またお会いしましょう。
Ethernet-APLの詳細はこちらをご覧ください。