IIoTを活用してフィールドデバイスのヘルスモニタリングをプラント操業へ役立てるためには
プラントには、多くのベンダーの様々なデバイスが1つのシステムに統合されています。しかし、通信プロトコルは複数使われていることが多く、このような環境でもこれらをまとめて監視するIIoTサービスを構築することはできるでしょうか?
工場を見渡せば、複数の計装ベンダーを目にすることと思います。標準化はエンドユーザーに多くのメリットをもたらしますが、実際にそうなっている例はあまり見当たりません。
プラントにおいて装置やプロセスの健全性を監視することは、複数のベンダーが存在する複数の環境下での構築が課題となります。診断を読み取るための方法が複数のプロトコル間で標準化されていなので、すべての計測器に適合するソリューションを見つけるのは困難です。
一方で、複数の計装ベンダーをサポートする IIoT技術を活用したアセットヘルスモニタリングシステムがあります。そのシステムがサポートする機器の数はアップデートのたびに拡大しています。
フィールドデバイスのヘルスモニタリングサービスが不可欠な理由と、IIoTを活用した予測サービスについてご説明いたします。ご興味がわきましたか?
アセットヘルスモニタリングサービスとは?
ほとんどのフィールドデバイスは、多くの自己診断情報を出力することができます。しかし、この機能を積極的に活用しているプラントはほとんどありません。もし、この情報を利活用できれば、プラントの操業と生産性を向上させることができます。
フィールドデバイスの自己診断のモニタリングは、プロセスオートメーションの分野ではすでに行われており、Endress+HauserのFieldCareのようなソフトウエアアプリケーションが市場に出回っています。しかし、モニタリングはローカルで行われ、ほとんどの場合スタンドアロン・ソリューションもしくは、サーバーとクライアントを備えたオフライン・ネットワークで使用されています。
サーバーへのリモートアクセスを許可している企業を見ることもありますが、それは非常にまれな例です。ほとんどの場合、接続速度が遅く使い勝手はよくありません。
数年前に化学工場を訪問した際、制御装置とともにサーバーにアクセスする作業をしました。高速インターネットがあったと思いますか?いいえ、ありませんでした。そこで使われていたのは、ダイヤルアップモデムでした。
きっと見たことがない方もいらっしゃると思います。今ではあまり使われなくなったFAXの通信音のようで、ノイズのように感じる方もおられるかもしれません。古いプラントの中には、PAM(プラントアセットマネジメント)ソリューションを使ってリモートアクセスを行っているところもありますが、この方法では、通信速度の制限から使い勝手はよくありません。
では、IIoT システムはどのように機能し、これまでのPAM システムよりもどういった点が優れているのでしょうか。IIoTシステムでは、アセットのヘルスモニタリングはこれまで以上に簡単になりました。以下に詳細をご説明いたします。
従来のアセットヘルスモニタリングアーキテクチャ
IIoTを活用したアセットヘルスモニタリングがどのような点を簡素化し、多くの利点をもたらすのか理解するために、従来のヘルスモニタリングがどのように機能しているのか理解する必要があります。
標準的なデバイスヘルスモニタリングソリューションは、ここに示すように、オートメーションピラミッドの5つのレベルに従います。
標準的なアセットヘルスモニタリングソリューションでは、このピラミッド構造でフィールドデバイスをコントローラに接続します。ワークステーションでプロセス情報を表示するためのHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)と、フィールドデータにアクセスするためのPAMセットがあります。
多くの場合、PAM ソリューションは制御システムを介してフィールドデバイスにアクセスします。このセットアップを好むユーザーもいれば、そうでないユーザーはゲートウェイやWirelessHARTネットワークなどのパラレルな接続手段を使用します。
また、PAM システムを使用してデータを読み書きすることもできますが、間違った操作をすると制御システムに影響を与えてしまうリスクを伴います。場合によっては予定外のシャットダウンを引き起こす可能性も考えられます。
しかし、IIoTのコンセプトは、この構造を少し変えました。
IIoTを活用したアセットヘルスモニタリングアーキテクチャ
例えば、NOA(NAMURオープンアーキテクチャ)を見てみましょう。これは制御システムに特化して設計されており、その堅固な構造は何十年にもわたって堅牢な動作と高いデータの可用性を提供します。
NOAの中心的なコンセプトは、プラントの安全性を維持し、コアプロセス制御とM+O(監視と最適化)ドメインの間のインターフェースを構成する点です。同時に、このコンセプトは、すでにプラントで稼働しているほとんどのシステムソリューションに合致しており、干渉を引き起こすことはありません。
多くのプラントソリューションとは異なり、ほとんどのIIoTサービスのデータ収集は、一方通行のルールに従っています。それは制約的に聞こえるかもしれませんが、現場のデバイスに干渉することなく情報にアクセスできることを意味します。
コアプロセス制御から収集されたデータに関しては、デバイスとM+Oドメインの間に「NOAダイオード」があります。クラウドサービスからの遠隔干渉を受けることなく、コアプロセス制御からの一方通行の通信を提供します。
第三者機関によるアセットヘルスサービス
いくつかのプロトコルでは、フィールドデバイスの診断情報を読み取るための標準化が行われていないため、一つのシステムでデバイスの診断情報の収集が困難になっています。そのため、様々なベンダーやデバイスに適切に対応したデータベースを常に更新できるソリューションが必要になります。
ほとんどのプラントが複数のシステム環境で構築されているので、できるだけ多くのブランドやデバイスを統合する機能を提供するIIoTサービスが不可欠になります。たとえば、エンドレスハウザーのNetilion Healthは、多くのベンダーの様々なデバイスに対応しています。対応デバイスは、アップデートのたびに対応数を増やし続けています。
対応デバイスのデータベースが常に更新されるアセットヘルスサービスでは、現場で使用しているデバイスから必要なデータを簡単に引き出すことができます。もちろん、1つのベンダーの製品で厳密に運用されている工場では、サービスの統合を簡素化することができますが、実際にはほとんど存在しないでしょう。
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